糸の生命を宿す、静謐なる手仕事。
民藝の精神を現代に受け継ぎ、一貫した手仕事を守り続ける染織家・柳崇氏。 その作品から放たれる静かな気品と、手に取った瞬間に伝わる驚くほどの優しさは、柳氏が一切の妥協を排して向き合う「糸」そのものに宿っています。
純国産糸、そして自工房での撚糸への執念。
本作品には、希少な純国産糸である「碓氷(うすい)製糸」が用いられています。 柳氏は、撚糸から染め、整経、機織りに至るまで、可能な限りの工程を自工房で手がけます。特に、布の風合いを決定づける「撚糸(ねんし)」を自ら行うことは、柳氏の制作において極めて重要な意味を持ちます。 糸に命を吹き込むように撚りをかけることで、いきいきと呼吸するような弾力と、帯としての優れた復元力(戻りの良さ)が生まれるのです。
綾市松が織りなす、モダンな調和。
染め分けられた色彩が重なる「綾市松」の意匠は、現代の街並みにも美しく馴染むモダンさを備えながら、どこか懐かしく温かな情緒を湛えています。 草木の色彩を写し取った柔らかな色合いは、お召しになる方の個性をさりげなく引き立て、心まで整えてくれることでしょう。
「良いものを、気負わずに」――。 本物を知り、きものを慈しむ方にこそ捧げたい、手のぬくもり溢れる一本でございます。



